株式会社ウェステリア 相談する

属人化したマクロの引き継ぎ——作った人が辞めたVBAをAIで解読する

「前任者が作ったマクロで毎月の集計が回っているが、中身は誰も知らない」——多くの会社で聞く状況です。コードさえ残っていれば、生成AIに読ませて日本語で説明させることができ、VBAが読めない担当者でも引き継ぎの初動を自力で進められます。解読・文書化から、直すか作り直すかの判断までを順に説明します。

結論から

  • 作った人がいなくなったマクロでも、コードをAIに渡せば「何をしているか」を日本語で解読・文書化できます。中身が読めれば、引き継ぎの大半は片づきます
  • 最初にやるべきは修正ではなく、現状把握と文書化です。動いているマクロをいきなり直すのは、リスクの高い順番です
  • 「直して使い続ける」か「作り直す」かは、業務の重要度・コードの状態・業務自体の変化の3点で判断します。全部を作り直す必要はありません

「ブラックボックスのマクロ」は珍しい話ではない

「前任者が作ったマクロで毎月の集計が回っているが、中身は誰も知らない」「ボタンを押すと何かが起きるが、壊れたら終わり」——多くの会社で聞く状況です。マクロ(VBA)はExcelさえあれば作れる手軽さの裏返しで、仕様書もコメントもないまま業務の中核に入り込みやすく、作成者の退職とともにブラックボックス化します。

従来、この状態の解決策は「VBAが読める人を探して解読を依頼する」しかありませんでした。いまは、コード自体は残っているのですから、生成AIに読ませて日本語で説明させることができます。VBAが読めない担当者でも、引き継ぎの初動を自力で進められるようになったのは大きな変化です。

まずやること——直す前に「読める状態」にする

順番を間違えないでください。最初にやるのは修正でも改善でもなく、現状把握と文書化です。動いているマクロをいきなり直すと、把握できていない別の処理を壊す恐れがあります。

ひとつ注意があります。社外の見えないところで作られたマクロには、まれに外部への接続や意図しない処理が含まれることがあります。解読の際に危険な処理の有無を必ずAIに確認させるのはこのためです。

  • バックアップを取る。マクロ付きファイルをコピーし、日付(YYYY-MM-DD)を付けて保管します。以降の作業はコピーで行います
  • コードを取り出す。VBE(Visual Basic Editor)を開き、標準モジュールなどにあるコードをコピーします。開き方が分からなければ、その手順自体をAIに聞けます
  • AIに解読させる。コードを生成AIに渡し、「このVBAコードが何をしているか、業務担当者向けに日本語で説明してください。処理の流れ、対象のシート・ファイル、実行の前提条件、危険な処理(削除・上書き・外部接続)の有無を挙げてください」と頼みます
  • 説明を実際の動きと突き合わせる。AIの説明を読みながらテスト用のコピーで実行し、説明どおりの結果になるか確認します。AIの解読も誤読の可能性があるため、この突き合わせが品質確認になります
  • 文書として残す。確認済みの説明を仕様メモ(目的・前提・実行手順・注意点)としてファイルに添えます。これで「読める状態」が完成し、属人化は実質的に解消します

動かなくなったときの応急対応

引き継いだマクロが突然エラーで止まった場合も、対応は解読と同じ要領です。

修正できたら、その内容(いつ・何を・なぜ直したか)を仕様メモに追記します。この積み重ねが、次の担当者への引き継ぎ資産になります。

  • エラーメッセージと、止まった箇所(黄色くハイライトされる行)をAIに伝え、原因の候補と修正案を出させます
  • よくある原因は、シート名や列の変更、ファイルの置き場所の変更、Excelや連携先の環境変化など、マクロの外側の変化です
  • 修正は必ずコピーで試し、正しく動くことを確認してから本番ファイルに反映します

直して使い続けるか、作り直すかの判断基準

解読が済むと、次の分かれ道が来ます。このマクロを維持するか、作り直すか。判断の目安を表にまとめます。

ポイントは、作り直しのハードルも以前より下がっていることです。解読で仕様が文書化できていれば、その仕様メモをもとにAIに新しいマクロを書かせることができます。一方、多人数での同時利用や権限管理が必要になっているなら、それはマクロの限界であり、システム化を検討するラインです。

すべてを作り直す必要はありません。実務では「重要度の高い1〜2本は仕様を固めて作り直し、残りは文書化して現状維持」という仕分けに落ち着くことが多いはずです。

観点直して使い続ける作り直す・移行を検討
コードの状態 AIの解読で流れが把握でき、修正も追える 解読しても複雑すぎて、修正のたびに壊れる
業務との一致 いまの業務手順と処理内容が合っている 業務が変わり、マクロ側の例外対応が積み重なっている
重要度と頻度 使用頻度が低い、止まっても代替手段がある 毎日の基幹業務で、停止の影響が大きい
使う人数 1〜2人が使う 多人数で同時に使いたい、履歴や権限管理が要る
作り直す場合の手段 現状維持 AIを活用してマクロを再作成/Python等へ移行/システム化

再発防止——次の属人化を防ぐ

引き継ぎ問題は、放っておけば次の担当者でまた起こります。仕組みとして残すべきは次の3点です。

  • マクロの台帳を作る。どのファイルにどんなマクロがあり、誰が管理しているかの一覧。まずは洗い出しだけでも価値があります
  • 仕様メモを義務にする。新しくマクロを作るとき(AIに作らせるときも)、目的・前提・手順のメモをセットで残すルールにします
  • AIへの依頼文(プロンプト)を保存する。AIで作ったマクロは、依頼文がそのまま仕様書になります

よくあるご質問

VBAがまったく読めない事務担当でも、本当に引き継げますか?
「読める状態にする」までは可能です。AIの解読とテスト実行の突き合わせで、何をするマクロかは把握できます。ただし、複雑なマクロの修正や品質保証まで自力で担うのは負荷が高い場合があります。把握まで自力で行い、修正の体制をどうするかは内製・外注の判断として別途決める、という進め方が現実的です。
コードをAIに貼り付けても情報漏えいになりませんか?
コードには取引先名・パスワード・サーバー名などが直接書き込まれていることがあります。貼り付ける前にコードを一読し、そうした固有情報を伏せ字にする、学習に使われない設定や法人向け契約のAIを使う、といった対策を取ってください。詳しくは機密情報の扱いに関する記事で解説しています。
パスワードがかかっていてコードが見られません。どうすればよいですか?
VBAプロジェクトに保護がかかっている場合、まず作成者や当時の関係者にパスワードの記録がないか確認してください。解除できない場合、そのマクロの中身の把握は困難なため、「挙動を観察して仕様を推定し、作り直す」方針が現実的な選択肢になります。挙動の整理(入力と出力の対応)もAIとの対話で進められます。

判断に迷ったら、まず話してみませんか。

初回は1時間、無料でヒアリングします。 決まっていない段階でかまいません。今の状況を伺って、何から手をつけるべきかを一緒に整理します。

無料で相談する

関連する記事