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エクセルの名寄せ・表記ゆれ修正をAIで——ルールとAIの使い分け

顧客リストや取引先マスタを長く使っていると、同じ相手が違う書き方で複数登録されている状態が生まれます。手作業の名寄せは丸1日単位の仕事になりがちで、見落としも残ります。この記事では、ルールで直せるものとAIが得意なものの見分け方と、進め方の順番を解説します。

結論から

  • 表記ゆれの修正は「ルールで機械的に直せるもの」と「意味の理解が必要なもの」に分かれます。前者はExcelの機能、後者はAIが向いています
  • 全角半角や「㈱→株式会社」のような変換はルール処理で十分です。AIに全部任せると、かえって確認の手間が増えます
  • 名寄せ(同一の会社・人を1件にまとめる作業)は、AIに候補を出させて人が最終判断する形が、精度と手間のバランスとして現実的です

表記ゆれ・名寄せとは何が問題なのか

顧客リストや取引先マスタを長く使っていると、同じ相手が違う書き方で複数登録されている状態が生まれます。

この状態のまま集計すると、同じ取引先の売上が複数行に割れて実態が見えなくなります。DM発送なら二重送付、請求業務なら宛先間違いにつながります。表記を揃える作業が「表記ゆれ修正(データクレンジング)」、同一の相手を1件にまとめる作業が「名寄せ」です。

手作業でやると、1,000件のリストでも丸1日単位の仕事になりがちで、しかも目視なので見落としが残ります。ここを機械に任せるのがこの記事のテーマです。

  • 「㈱ウェステリア」「株式会社ウェステリア」「(株)ウェステリア」
  • 「東京都渋谷区1-2-3」「東京都渋谷区一丁目2番3号」
  • 「ヤマダ タロウ」「山田太郎」「山田 太郎」(全角・半角スペースの違い)

ルールで直せるもの・AIが得意なもの

すべてをAIに投げる前に、知っておきたいことがあります。表記ゆれの大半は、実は決まったルールの置き換えで直せます。ルールで直せるものにAIを使うのは、遠回りです。

見分け方はシンプルで、「置換のルールを紙に書き切れるか」です。「㈱を株式会社に置換」は書き切れるのでルール処理。「これとこれは同じ会社か?」のように文脈や常識が要る判断は、書き切れないのでAI向きです。

ゆれの種類向いている手段
法人格の略称 ㈱ ⇔ 株式会社、(有) ⇔ 有限会社 ルール処理(置換・関数・Power Query)
全角・半角 ABC ⇔ ABC、スペースの種類 ルール処理(関数で一括変換)
余分な空白・改行 前後のスペース、セル内改行 ルール処理
住所の書式ゆれ 1-2-3 ⇔ 一丁目2番3号 ルール+AIの併用
社名の略称・旧社名 「〇〇商事」⇔「〇〇商事株式会社 東京支店」 AIに候補を出させ、人が判断
誤字・入力ミス 「ウエステリア」⇔「ウェステリア」 AIに候補を出させ、人が判断

進め方——ルール処理を先、AIを後に

順番を間違えると効率が大きく落ちます。おすすめは次の順です。

この順番にする理由は2つあります。ルール処理で件数を減らしてからのほうがAIに渡す量が減って確認も楽になること、そしてAIの判定には一定の割合で誤りが混ざるため、機械的に直せるものまでAIに任せると誤りの混入箇所が増えることです。

  • ルール処理で機械的なゆれを潰す。全角半角の統一、空白除去、法人格の統一。Excelの関数やPower Queryで一括処理できます。関数がわからなければ、生成AIに「この列の全角英数字を半角に統一する数式を作って」と頼めば作ってくれます
  • 完全一致の重複を除く。表記が揃えば、Excelの「重複の削除」機能で同一行をまとめられます
  • 残った「揺らぎのある候補」をAIに判定させる。ここで初めて生成AIの出番です。「この2件は同一の会社と思われるか、理由付きで判定して」とリスト形式で渡すと、類似候補のペアに判定と理由を付けて返してくれます
  • 人が最終判断してマスタに反映する。AIの判定は候補出しと割り切り、統合の実行は人が確認してから行います

名寄せの最終判断を人に残す理由

「〇〇商事」と「〇〇商事株式会社」が同じ会社かどうかは、多くの場合AIの判定どおりです。しかし、実際には別法人の同名会社、グループ会社と本体、統合前の旧社名など、社内の人しか知らない事情が絡むケースが必ず一定数あります。

名寄せの誤統合は、請求先の取り違えなど実害に直結します。だからこそ、候補出しと理由付けまでを機械、統合の決定は人という分担が、精度と手間のバランス上もっとも現実的です。AIが「同一の可能性が高い」と判定したペアだけを人が見る形にすれば、全件を目視するのに比べて確認対象は大幅に絞れます。

一度きれいにした後、汚さない仕組みもセットで

クレンジングは一度やって終わりではありません。入力が野放しなら、リストは数か月でまた汚れます。あわせて検討したいのは次のような手当てです。

「きれいにする作業」より「汚れない仕組み」のほうが、長期的には効きます。

  • 入力欄にプルダウンや入力規則を設定し、自由入力を減らす
  • 新規登録時に既存の類似候補を確認する運用にする
  • 月に一度など、定期的にルール処理を再実行する(手順をマクロやPower Queryで残しておけばワンクリックです)

よくあるご質問

顧客リストをそのまま生成AIに貼り付けても大丈夫ですか?
氏名や住所は個人情報にあたるため、扱いには注意が必要です。学習に使われない設定や法人向け契約を利用する、判定に必要な列だけを渡す、テストは架空データで行う、といった対策を検討してください。詳しくは機密情報の扱いをまとめた記事で解説しています。
何件くらいまでAIで名寄せできますか?
チャット画面に貼り付ける使い方では、一度に処理できる量に限りがあるため、数百件程度ずつ分けて渡すのが現実的です。数万件規模になる場合は、スクリプトやツールでAIを呼び出す仕組みにするか、外部に相談する段階と考えてください。
AIの判定精度はどのくらい信用できますか?
データの質や渡し方で大きく変わるため、一律には言えません。だからこそ「AIの判定=候補」と位置づけ、最初は判定結果を全件人が確認し、傾向がつかめてから確認対象を絞っていく進め方をおすすめします。精度の考え方は別記事も参考になります。

判断に迷ったら、まず話してみませんか。

初回は1時間、無料でヒアリングします。 決まっていない段階でかまいません。今の状況を伺って、何から手をつけるべきかを一緒に整理します。

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