エクセルの複数ファイルをまとめる作業を自動化——形式ばらばらでも
支店別・月別に分かれたExcelファイルを1つにまとめる作業は、多くの会社で毎月発生しています。この記事では、形式が揃っている場合の完全自動化と、ばらばらな場合にAIで列を対応付けてから統合する2段構えの進め方を解説します。
結論から
- 支店別・月別ファイルの統合は、形式が揃っていればPower Queryやマクロで完全に自動化できます。毎月のコピペ作業は続ける必要がありません
- 形式がばらばらな場合は、AIに「列の対応付け」をさせてから機械的に統合する2段構えが現実的です
- 長期的にいちばん効くのは、統合の自動化とあわせて入力側のフォーマットを統一することです。入口が揃えば、統合は単純作業になります
「ファイルをまとめる」作業はなぜ大変なのか
支店ごとの売上報告、部署ごとの経費一覧、月ごとの実績ファイル——複数のExcelファイルを1つの表にまとめる作業は、多くの会社で毎月発生しています。典型的な手順はこうです。
ファイルが5個なら30分、20個なら数時間。しかも貼り忘れ・二重貼り・行ずれのリスクが常にあります。この作業のやっかいさは、実は2つの別の問題が混ざっている点にあります。「機械的な結合」の問題と、「形式のばらつき」の問題です。分けて考えると、それぞれに適した解決策が見えてきます。
- 各所から送られてきたファイルを開く
- 中身をコピーして集約用のファイルに貼り付ける
- 列の順番が違う・項目名が違うファイルは、手で並べ替えて貼る
- 全部貼り終えたら、行数が合っているか確認する
形式が揃っている場合——Power Queryかマクロで完結
各ファイルの列構成が同じなら、統合は完全に機械化できます。代表的な手段を比較します。
毎月の定型業務なら第一候補はPower Queryです。「このフォルダに入っているファイルを全部縦につなぐ」という設定を一度作れば、翌月からはファイルを置いて更新するだけになります。設定方法がわからなくても、生成AIに「支店別の売上ファイルをPower Queryで1つにまとめたい。手順を教えて」と聞きながら進められます。Power Queryの向き不向きは別記事で詳しく扱っています。
| 手段 | 向いている場面 | 強み | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Power Query | 毎月同じフォルダに同じ形式のファイルが届く | フォルダごと一括読込。手順を保存でき、翌月は更新ボタンだけ | 初回設定に慣れが要る |
| マクロ(VBA) | 統合時に独自の加工・振り分けが要る | 細かい業務ルールを組み込める | 属人化しやすい。仕様メモを残す |
| 生成AIに都度依頼 | 単発・一度きりの統合 | 準備なしで済む | 毎月の定型作業には非効率 |
| 手作業のコピペ | ファイル2〜3個・ごく低頻度 | 何も作らなくてよい | 件数が増えると破綻する |
形式がばらばらな場合——AIで「列の対応付け」をしてから統合する
現実には、支店ごとに列の順番が違う、項目名が「売上」「売上高」「金額」とばらばら、余計な小計行が挟まっている——という状態のほうが多いはずです。ここが従来の自動化の壁でした。ルールベースの道具は「A支店の『金額』列とB支店の『売上高』列は同じ意味」という意味の判断ができないからです。生成AIはこの判断が得意です。現実的な進め方は次の2段構えです。
ポイントは、AIにデータ本体の統合をやらせるのではなく、対応付けという「判断」だけをやらせることです。数万行のデータをAIに直接流し込むと、量の限界や転記ミスの心配が出ますが、見出しの対応付けなら渡す情報はわずかで、人の確認も一目で済みます。
なお、統合後には「㈱と株式会社」のような表記ゆれの問題が表面化しがちです。統合とクレンジングはセットで考えてください。
- AIに対応表を作らせる。各ファイルの見出し行(1行目だけで十分です)をAIに渡し、「統合後の標準フォーマットはこの項目。各ファイルの列がどれに対応するか、対応表を作って」と依頼します。人はその対応表を確認・修正します
- 対応表に従って機械的に統合する。確認済みの対応表をもとに、Power Queryの設定やマクロで統合します。この部分もAIに作らせることができます
統合を楽にする一番の近道は「入口を揃える」こと
統合作業の自動化を進めると、必ず気づくことがあります。そもそも各所から届くファイルの形式が揃っていれば、統合は単純作業だったということです。
フォーマット統一は関係者への依頼が必要なぶん腰が重くなりがちですが、一度揃えば統合・集計・チェックのすべてが楽になります。統合の自動化と入口の統一は、車の両輪と考えてください。
一方、ファイルを送ってくる相手が社外(取引先など)で形式を指定できない場合は、入口を揃える打ち手が使えません。その場合こそ、AIによる対応付けの出番です。
- 入力用のテンプレートファイルを配り、列の追加・変更をしない運用にする
- 入力欄にプルダウンや入力規則を設定し、自由記入を減らす
- ファイル名の付け方(例: 売上_支店名_YYYY-MM.xlsx)を決める
よくあるご質問
- ファイルが毎月20〜30個あります。AIに全部渡して統合してもらえますか?
- チャットにファイルを渡して統合させる使い方は、一度に扱える量に限りがあり、毎月の作業としては非効率です。定型化できるならPower Queryやマクロで統合の仕組みを作り、AIはその仕組み作りと、形式がばらばらな場合の対応付けに使う分担をおすすめします。
- 統合したら行数が合っているか不安です。確認方法はありますか?
- 「各ファイルの行数の合計」と「統合後の行数」を突き合わせるのが基本です。あわせて金額列の合計も照合すれば、貼り漏れ・二重取り込みはほぼ検出できます。この確認自体も数式で仕組みにできます。突合の考え方は別記事で詳しく扱っています。
- 各支店のファイルには統合したくないシートやメモ欄も入っています。大丈夫ですか?
- Power Queryやマクロでは「どのシートのどの範囲を取り込むか」を指定できるため、不要なシートやメモ欄を除いて統合できます。ただし取り込み対象のシート名や表の開始位置がファイルごとに違うと設定が複雑になるため、テンプレートでシート構成を揃えておくと安定します。